イザナミの死体から生まれた神々及び黄泉国の神々

 

 

伊邪那岐神は妻の伊邪那美神に会いたいあまり黄泉国へと追いかけていった。伊邪那美神が黄泉国御殿からお出迎えになると伊邪那岐神は「いとしいわが妻よ、私とそなたがつくった国はまだ出来上がっていない。だから帰ってこい」と仰せられた。
伊邪那美神は「私はもう黄泉国の食べ物を食べてしまいました。でもあなた様がおいでなさったことは畏れ多いことでございますので帰ろうと思います。しばらく黄泉国の神と相談してみますので、どうぞその間私を御覧遊ばされますな。」と仰せられた。

このように仰せられて伊邪那美神が御殿の奥にお入りになったまま、大層久しくなった。伊邪那岐神は、待ちきれず奥に入って御覧になると伊邪那美神の御骸にはウジがたかってコロコロとなり八柱の雷神が生まれていた。

 

八の雷神(やくさのいかづちがみ)

大雷

おおいかづち

火雷

ほのいかづち

黒雷

くろいかづち

柝雷

さくいかづち

陰部

若雷

わきいかづち

左手

土雷

つちいかづち

右手

鳴雷

なるいかづち

左足

伏雷

ふしいかづち

右足

 

 

伊邪那岐神はこれを見て恐れ、逃げてお帰りになった。すると伊邪那美神は「よくも私に恥をかかせましたね」と仰せられ黄泉国の醜女の軍勢に後を追わせた。伊邪那岐神は醜女からはなんとか逃げきったが、伊邪那美神は自分の身体から生まれた八柱の雷神に黄泉国の軍勢を添えてさらに追わせた。伊邪那岐神神は黄泉平坂(黄泉国と現実世界の境界)の坂本まで逃げ、そこにあった桃の実を三つとって軍勢に投げつけると、追っ手はことごとく逃げ帰った。そこで伊邪那岐神神は桃の実に感謝し神名を授けた。

 

醜女

豫母都志許売
(黄泉醜女)

よもつしこめ
(よもつしこめ)

 

桃の実

意富加牟豆美命

おおかむづみのみこと

・桃=霊力のある木=悪霊邪気を祓う神聖な木
・伊邪那岐神は霊力をみとめ「お前が私を助けたように、葦原中国のあらゆる人々の苦しみ悩みを助けてくれよ」と仰せられた

 

 

しまいには伊邪那美神自ら追ってきた。そこで伊邪那岐神は「千引の石」(千人引きの大石)を、黄泉平坂の真ん中に置き、石をはさんで向かい合い、夫婦の縁を切る誓いをたてた。その時、伊邪那美神神は「いとしい夫よ。このようなことをなさるなら、あなたの国の人草を一日に千人殺しますぞ」と仰せになった。そこで伊邪那岐神は「いとしい妻よ。そなたがそうするなら、私は一日に千五百人を産もう」と仰せられた。

 

 

黄泉津大神

よもつおおかみ

・伊邪那美神のこと
・生成の神から冥界神・大地母神としての一面

菊理媛神
(白山媛命)

くくりのひめのかみ
(しらやまひものかみ)

・黄泉平坂で逃げる伊邪那岐神と追う伊邪那美神の言い合いの際、この媛が伊邪那岐神に助言をしたことで無事に黄泉国から脱出したという(日本書紀)
白山比盗_社(国中、石川鶴来)他全国の白山神社

 

 

千石の石

道返大神
(塞坐黄泉戸大神)

みちかえしのおおかみ
(さやりますよみどのおおかみ)

・伊邪那美神を追い返した石
・桃同様に人間界と他界との境界神

 

 

このあと、伊邪那岐神は「私は見るも汚い、穢れた国へ行ったものだ。身を清めるための禊をしよう。」ということで筑紫日向(九州の日に向かう所)の小門の阿波岐原で禊をなさることになる。
 

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