「近江湖南の神社紀行・日吉大社編・2」
<平成16年8月参拝>
目次
日吉大社編<<日吉大社>>
1「日吉大社東本宮」「日吉大社樹下神社」「日吉大社三宮神社」「日吉大社牛尾神社」
2「日吉大社西本宮」「日吉大社白山姫神社」「日吉大社宇佐神社」「日吉大社・東照宮」
湖南編
3「近江神宮」「御上神社」「日牟礼八幡宮」
西本宮から標高378メートルの牛尾山を往復して、今度は西本宮に向かう。
時間は9時30分。東本宮側からあるけば、白山宮、宇佐宮、そして西本宮という順序で並んではいるが、文章構成上「西本宮」から掲載していく。
「日吉大社」(山王総本社・延喜式内名神大社・朝廷奉幣二十二社の一つ・官幣大社)
<滋賀県大津市坂本鎮座・朱印>
祭神<祭神に関しては各社にて記載>
東本宮:大山咋神
西本宮:大己貴神
由緒
日吉大社は東西両本宮を中心に社殿が鎮座している。全国3800余社の分霊社があり、その総本社。
世にいう山王二十一座とは上七社・中七社・下七社の総称であり、なかでも上七社の西本宮・東本宮・宇佐宮・牛尾宮・白山宮・樹下宮・三宮宮は、「山王七社」としてその重要な位置を占めている。
境内地は八王子山(牛尾山)を含む十三万坪。国宝社殿として東西両本宮二殿、そして重要文化財として十七棟。かつては境内百八社・境外百八社と称され、境内及び坂本の町々が一大拠点であった。
「日吉大社・西本宮」
祭神:大己貴神
由緒
天智天皇7年に、大和国大三輪神を勧進。その後、神威盛んとなった八幡神を迎えて摂社「宇佐宮」が建立され、山岳信仰に深い関係があり、比叡山天台宗とも縁がある白山姫神を迎えて摂社「白山宮」となった。
この西本宮関係の3社と東本宮関係の4社をあわせて「山王七社」と呼称。
現在の日吉大社社殿群のなかでは、その中心的役割を担っている。
西本宮本殿<国宝>
日吉造、檜皮葺。
日枝造は、一名を聖帝造といい、側面背面が特徴的。東本宮本殿とほぼ同様の造り。
天正14年(1586)に復興されたものであるが、慶長2年(1597)に改造されている。
西本宮拝殿<国重要文化財>
入母屋造、檜皮葺。天正14年(1586)の本殿と同時期の建立。日吉大社同型式拝殿のなかでももっとも精巧な構造となっている。
西本宮楼門<国重要文化財>
天正14年頃(1586)の建立という。
三間一戸楼門形式。入母屋造、檜皮葺、縁付き。西本宮楼門よりの規模が大きい。
写真三枚: 西本宮楼門<国重文> |
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西本宮拝殿<国重文> |
西本宮拝殿<国重文> |
写真三枚: 西本宮本殿<国宝> |
のんびりとした境内。人の気配はすくなく、ただ神職や巫女の姿ばかりを目にする。
9時30分の境内は、そんなに朝が早いわけではないが、それでも参拝している身からすると人が多いよりも少ない方がよい。掃除中の邪魔にならないように境内散策しつつ、ここでようやくに御朱印を頂く。
たしかに西本宮が「日吉大社」の中心のようだ。境内気配の立派さも格段。立派であろうと国宝であろうと大社であろうと、私が境内にいる間に私の心持ちを邪魔する存在が皆無であるというのが贅沢すぎる環境。
「白山姫神社」(白山宮・日吉大社摂社)
祭神:菊理姫神
本殿<国重要文化財>
慶長3年(1598)建立。三間社流造、檜皮葺。樹下神社本殿とほぼ同型式。
拝殿<国重要文化財>
慶長3年(1598)建立。本殿と同時期につくられた。入母屋造。檜皮葺。
「宇佐神社」(宇佐宮・日吉大社摂社)
祭神:田心姫命
本殿<国重要文化財>
慶長3年(1598)建立。東西両本宮と同じく日吉造。
拝殿<国重要文化財>
慶長3年(1598)建立。本殿と同時期につくられた。入母屋造。檜皮葺。
写真三枚 白山宮拝殿・本殿<国重文> |
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宇佐宮拝殿<国重文> |
宇佐宮本殿<国重文> |
きっとこういうのを日吉らしい、というのだろうか。私のイメージする日吉大社は東京の日枝大社よろしく、もっとギラギラと賑賑しい感じで猿猿しているものかと思っていた。前日に降った雨が、ようやくに乾きはじめた境内で、青々と繁る比叡山の木々に囲まれる境内。信長に焼かれ、そして秀吉の手によって再興された日吉大社は、私の「日吉・日枝」のイメージとは全く違っていた。
こんな日吉大社に接することができただけでも大満足。豪華絢爛というよりも質朴さが溢れ出ている時間軸の中で、静かに佇む社殿群に最大限の感謝をこめて改めて拝する。
時間は10時ちょうど。そろそろ、ということで日吉大社をあとにする。敷地の西側にむかって5分ほど歩けばロープウェイ乗り場と比叡山高校の隣に日吉大社の末社となっている「東照宮」が鎮座している。
「東照宮」(日吉大社末社東照宮)
祭神:徳川家康公
日光東照宮にさきだつ寛永11年(1634)に天海僧正によって造営。日光東照宮のモデルとなったという。
権現造りの社殿<本殿・石の間・拝殿>が国指定重要文化財。
東照宮正面 |
東照宮<国重文> |
拝殿<国重文> |
本殿<国重文> |
日吉大社の末社扱いではあれど、完全に独立の気配。こちらは「東照宮」らしさにあふれる権現造りで、ある意味での安心感を得る。四脚唐門と透塀にかこまれ、中に直接入ることはかなわないけれども、四方周囲をめぐり、透塀のすきまから、垣間見る社殿に、東照宮・徳川霊廟建築の根本、ともいわれる豪華さを見出す。
坂本の街をあるき、坂本の坂を実感しながら、京阪石山坂本本線の坂本駅に到着。
時間は10時30分。朝の8時に日吉大社に到着して、2時間30分の日吉・坂本滞在。充分に日吉大社は散策したし、山頂の奥社にも詣でたし、満足はしているけれども、それでもなにやら心残り。
どうやら比叡山に登らないと「片手落ち」なのかもしれないが、さしあたり先を急ぐ私は、次なる目的地の未知なる神社へと頭を切り換える。
近江の最上級の古社を詣でた後に、近代神社たる近江神宮を目指す。それゆえに頭の切り替えが必要なのかも知れない。
参考文献
境内案内看板・由緒書
神社辞典(東京堂出版)
角川地名大辞典25・滋賀県